先週、伊勢丹新宿店に所用で寄ったところ、
木版画の美術催事
「牧野宗則木版画&ブロックス・アート展」
(10月16日まで 5階アートギャラリー)
がおこなわれていました。
版画には、
木版画の他に、
銅版画、石版画(リトグラフ)、孔版画(シルクスクリーン)
がありますが、
木版画単独での催事というのは、
かなり珍しいため、覗いてみました。
はじめ、画廊関係の方かと思っていた、
話し掛けて説明をしていただいていた方が、
作家の牧野宗則氏ご本人でした。
通常、木版画は、
北斎・広重の頃より現代まで、
作画・彫師・摺師と分業ですすめます。
これは、「作画」「彫り」「摺り(刷り)」ともに、
それぞれが高い技術力を必要とするからですが、
牧野宗則氏は、
この木版画の「作画」「彫り」「摺り(刷り)」を1人でつくりあげます。
16歳の頃に版画の世界に入り、
「彫り」「摺り(刷り)」の修行を積み、
44歳にして師より「もうよし」と
技の継承の完成を認められたそうです。
デジタル化が進んだ現代において、
構想から下絵を描き、
一色ごとに木版を彫り、
一色ごとに木版をかえて
重ね刷りをくり返してゆくといった作業は、
究極のアナログともいえ、
一作品に数十版も木版を彫り、
重ね刷りされる作品もある牧野宗則氏の作品は、
現在、
「一年に二作品しかつくれない」
といったお話も納得がいきました。
ゴッホやモネに影響を与えた浮世絵も木版画ですが、
日本で木版画が進化したのは、
良質の桜の樹があったからだそうです。
しかし、現在では「染井吉野(そめいよしの)」が主流となり、
この「染井吉野(そめいよしの)」の寿命が、
75年から80年くらいと短いために、
木版画に使えるほどの大きさにまで育たず、
今後日本の木版画の制作は、
更に厳しくなるであろうとのお話でした。
現在、浮世絵の版木は、
ことごとく海外へ流出し、
日本文化の研究に海外の美術館へ赴かなければならないといった、
たいへん残念な現状もあります。
また、摺り(刷り)師でもある牧野宗則氏は、
後に勝手に刷られることを嫌い、
過去の作品の版木を燃やしていたそうですが、
関係者からとめられたため、
色が残る版木をブロックに切ったものを組み合わせて、
あたらしく制作されたのが、
「ブロックス・アート」です。
版木の様々な色と彫りが、新たな世界を創造しています。
浮世絵の権威である太田記念美術館は、
牧野宗則氏の木版画の全作品を収蔵し、
福岡太宰府天満宮の100年ごとにおこなわれる、
菅原道真公 御神忌の大祭に、
牧野宗則氏の紅白梅の作品が宝物として奉納されるそうです。
2003年 版画家としてはじめて、文化庁長官表彰を受章。
10月24日から30日までは、
長崎新聞社の主催で、
長崎大丸8階イベントホールにて
「牧野宗則木版画&ブロックス・アート展」(入場料500円)
が開催されるそうです。
浮世絵の時代から流れる
デジタルでは非常に表現が難しい、
究極のアナログを、
体験してみてはいかがでしょうか。
※牧野宗則氏の掲載許可をいただいています。
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